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『黙阿弥オペラ』

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井上ひさし追悼公演 『黙阿彌オペラ』井上ひさし・作  栗山民也・演出

2010年8月21日(土)18:00~ 紀伊国屋サザンシアター 
≪出演≫
 五郎蔵    藤原竜也
 及川孝之進  北村有起哉
 円八     大鷹明良
 久次     松田洋治
 陳青年    朴 勝哲
 とら/おみつ 熊谷真実
 おせん    内田 慈
 河北新七   吉田鋼太郎

幕末から明治にかけての、日本の一大動乱期。 江戸の老若男女はあげて歌舞伎に熱狂していた。 それらの狂言を一手に引き受けていたのが、 二世河竹新七、すなわちのちの黙阿彌。 この劇詩人が、小さなそば屋で知り合った 江戸の庶民たちと株仲間を組み、 天下のご一新をはさんでくりひろげる大騒動。 笑いと感動の物語。(こまつ座サイトより)


舞台はずっと一軒の小さな蕎麦屋。
吹雪の夜に、お互い自殺しようとしていたところ、橋の上で出会った貧しいざる売りの五郎蔵といつまでも芽の出ないことに絶望した狂言作家の河北新七(のちの黙阿弥)。

一年後の再会を約束し、芝居の登場人物のような、泥棒、噺家、浪人者、不良少年に出会う新七。

そば屋にその夜捨てられた少女の成長を願い、株仲間をつくることに。

ちょうど世の中は、明治維新。西洋化の波が押し寄せてきていた。
そんな折、黙阿弥にオペラを書けとのお達しが・・・・。


ものすごく、味わい深いお芝居でした。
本当に色々なことが詰まっていて。
パンフレットの中の、演出家栗山民也さんのお話がわかりやすいです。

『この作品には、大きくて力強くて深い根っこがいくつもある。
一、江戸から明治へという大きな時代の転換。
一、黙阿弥が創作のモチーフとした金。
一、株仲間という小さな共同体が銀行という大きな階級社会に変わっていく経済の仕組み。
一、日本独自の文化が西洋のオペラに強要されるという国家主義による残酷な切り捨て__。』
と。

黙阿弥には井上さんの想いがこもっていて。
狂言の台詞には、それはそれは美しいリズムを持った日本語が使われていて。

それが一軒の小さなそば屋でずっと繰り広げられるので、なんて、うまくできた戯曲なんだろうと観終わってとても感心しました。

悲しいこと、悔しいこと、大変なことをたくさん包み込んで、お芝居は続いて行くのに、
何故か観終わった心の中は、温かいものが残って。

それは、やっぱり『御恩送り』という言葉で表わされている、人と人とのつながりが、そうさせているんだろうなと思う。ひょんなことで出会った人々が泣き笑い、少しの栄華を体験して、最後にはすべて失って。だけど、出会ったことで得たことのなんと大きいことか、人生って素晴らしい!また頑張るか!と、心がなんだか満足するのです。

そうだよなあ・・・と考えさせられることも色々ありました。

酷い貧しさの中で暮らすということ。その悲惨さ。子どもを育てて行けないなんて。

芝居の作り手、演じ手の気持ち?!
「その芝居を、本当に観たいと心から願う御見物衆のために芝居を書く。」という黙阿弥。
「一年間貧しい食事で我慢して、観劇代を工面する御見物衆のために・・・。」と。

私はそんなに我慢我慢はしないで、お芝居を観に行くけど、
やっぱり心から満足して帰ってきたい。
お芝居を観て、明日からの活力になるような、そんなお芝居を是非是非いつも上演していただけたら嬉しい。

日本が明治の初めに、どんどん取り入れた西洋文化。
世界に追い付くため必要だった部分もあるけれど、大切にしなくちゃいけないものまで、
あっさり捨ててしまったような。
オペラを書けと言われた黙阿弥の気持ちが伝わってきて、共感するとともに、
もっとしっかり日本の良さをゆっくり守ってきていたら、今どんなふうなんだろうと考えたりします。どうしても譲れない部分がたくさんあったような。
流される方に私も入ってしまいそうだけれど。だから、それが怖いなあとも思いました。

『今という時代のことすべてがつまっていて、まさにそのまま描かれている。』と井上ひさしさんが上演を希望したそうです。
・・・うん、そうかもなと思いました。


役者さんたち。

五郎蔵の竜也くん。
悪いんだけど、憎めない、イキの良い人物を生き生きと楽しそうに演じていて、
とても良かったです。こういう役、似合うんだなあと。地なのね、きっと。
悲劇のヒーローみたいなのが多いけど、役の幅が広がって、次への期待が高まります。
案外、土臭い役がお似合いなのかもしれません。楽しみです。

私にとっては、『ANJIN』以来の竜也くんでしたが、
久しぶりに(毒)、心から楽しめた舞台となりました♪ 
嫌みじゃなくて、これは本当に嬉しいことです!!私も御見物衆ですから。
これからも応援していこう!とあらためて思いました。
最初の五郎蔵さんは、角野卓造さんだとか。
イメージが違って、大変だったと思いますが、竜也くんなりの五郎蔵さんがいい味出してました。
ちょっとチンピラ風で。風体もどんどん変わります。お着替えたくさんなので、楽しいです。

『おきぬ坊』の台詞を代弁するところが私のもっともお気に入り。
ひゆっと反らせた両手と曲げたおひざのポーズも、声も、かわいく、ユーモラス。
ちょっと切なくて。

いろんな服装ででてくるので、目にも楽しいのですが、竜也くんは小ぎれいな格好で出てくると、どうしてもカッコ良くなってしまう。ハンサムって損な時もあるんですね。


ほかの役者さんたちも、本当に演技達者な方たちばかりで。

あて書きか?と思うほど、役にしっくりとハマっていたと思います。
そう思わせる役者の実力なんでしょうけど。

熊谷さんは、おばあさん役が本当にお上手でした。

鋼太郎さんは、さすが!の安定感。

大鷹さん、松田さん、役にぴったり!お二人とも、とても声が素敵。

北村さん、面白かったです~~。いろんな役ができる方なんだなあと思いました。
登場のシーンが大好きです。

内田さんは、とてもかわいくて。フレッシュな魅力を振りまいてました。


こまつ座さんのお芝居、じつは初めてでした。

とても面白かったので、ハードディスクに眠っていた『ロマンス』を観てみようと思います。
by kurocham | 2010-08-30 22:20 | 舞台

北海道で2人のkids子育て中。 日々の暮らしや 藤原竜也くんについて♪

by kurocham
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